久々に映画『羊と鋼の森』を観ました。
この映画、大好きなんです。今回で3回目。
映画紹介とレビューを書いていきます。
『羊と鋼の森』が配信されているVODも紹介しますね。
この映画は、こんな方におすすめ
・心温まる、若きピアノ調律師の成長物語を見たい方
・北海道を舞台にした、静謐で美しい映画を楽しみたい方
『羊と鋼の森』映画情報とあらすじ
- 基本情報
監督 | 橋本光二郎 |
脚本 | 金子ありさ |
原作 | 宮下奈都 |
主な出演 | 外村直樹:山崎賢人 柳伸二:鈴木亮平 佐倉和音:上白石萌音 佐倉由仁:上白石萌歌 板鳥宗一郎:三浦友和 |
公開 | 2018年 |
上映時間 | 134分 |
- あらすじ
将来の夢もなく生きていた外村は、高校でピアノ調律師の板鳥と出会い、板鳥の調律したピアノの音色に魅せられ、その日から自身も調律の世界を目指すことを決意。
映画.comより引用:https://eiga.com/movie/86157/
専門学校を出て新米調律師として働くようになった外村は、調律師の先輩・柳やピアニストの高校生姉妹・和音と由仁ら、調律を通して知り合う人々とのかかわりによって、調律師として、そしてひとりの人間として成長していく。
『羊と鋼の森』のレビュー
ここからは、レビューを書いています。
ネタバレをしないよう気をつけていますが、セリフを引用したり、内容にも触れています。
気にされる方はここでストップするか飛ばしてくださいね。
「静謐」という言葉がぴったりな映画
音楽映画なのに静謐なの?と思われるかもしれません。
確かに演奏シーンもけっこう多いです。
しかし、映画全体に漂う雰囲気は、澄み切った静けさ。
調律シーンや森のシーンは、なんと美しいことでしょう!
静があるから、動が活きる。
音楽が一層美しく聴こえるのです。
また、主人公・外村の内的葛藤や心情変化がノンバーバル(非言語)な領域で丁寧に描写されていて、演技力や映像表現に脱帽でした。
心情変化を、森をさまようことに喩えているのが新鮮です。
控えめキャラですが、「成長したい」という意志が彼の行動を貫いていて、コツコツ努力していくタイプ。
それも、この映画に静けさを感じる要素なんでしょうね。
クライマックスに収斂されていくスッキリした物語
以前この映画を見たときは、「あまり起伏がないな...」と感じました。
物語にはしっかり引き込まれていたのですが。
しかし今回、久々に見てみると、ちゃんと起伏はありました。
当時の僕は、強烈な展開と伏線回収がある刺激的な映画ばかり見ていたので、相対的にそう感じてしまったのでしょう。
構成としては、3幕に分かれていると思います。
外村の挑戦が始まる、出立の第1幕。
この幕の最後で、外村は調律師として独り立ちしています。
毎回「子犬のワルツ」のシーンで泣いてます(笑)
あの可愛らしい曲に、これほどの意味づけをできるとは...
第2幕からは、和音・由仁の姉妹の登場が増え、ストーリーが多層的に。
外村が、調律師としても人間としても大きく成長していきます。
最後の30分ほどが第3幕。
和音の深い葛藤、外村の最大の挑戦が描かれます。
クライマックスでは、外村、和音、由仁、柳、それぞれが新たな決意と旅立ちを迎えるという、全て解決・満足度マックスの構成。
エンドロールへ流れ込んでいく美しさといったら、たまりません!
板鳥さんの言葉
もう、板鳥さん(三浦友和)かっこよすぎです。
序盤で、外村に「板鳥さんは、どんな音を目指していますか」と聞かれ、詩人・原民喜の言葉を教えます。
「明るく静かに澄んで、懐かしい文体。
少し甘えているようでありながら、厳しく深いものを湛えている文体。
夢のように美しいが、現実のように確かな文体。」
原民喜の目指していた文体が、そのまま自分の目指す音にも当てはまる、と言うのです。
この言葉は、非常に抽象度が高い。ゆえに、文章はもちろん、音楽や絵画から、話し方や広告コピーなど、あらゆるものに適応できますね。
本当に美しく、素敵な言葉だと思います。
外村にとって、板鳥さんはメンター(師)です。
外村自身が大きく成長していくタイミングで、板鳥さんから無言の「伝授」を受けるのが印象的でした。
「伝授」は、物語でも現実世界でも、とても意味深いものですね。
メンターから受け取るのは、ただ道具や技術だけではなく、志のように精神的に引き継がれるものもあるのです。
人気漫画などでは、だいたい伝授のシーンがあるので、探してみてくださいね。
『羊と鋼の森』の音楽と映像
この映画の音楽と映像についても、少し書いておきます。
音楽について
調律師の映画だけあって、録音にこだわっていますね!
弦の共鳴や空間の響き、ピアノのアクションが発する音など、とてもクオリティーが高く感じました。
まあ曲はカットされてしまうのですが、あえて「カットしてるんですよ」というのが分かるようにしている。
その方が、無理に繋げて「曲」を作り出しちゃうより、僕は好きです。
映像について
映像はとても美しいです。光の使い方が絶妙。
人工灯の室内のシーンですら、美しい。
美しすぎて現実感がなかったりしますが、「ピアノは、世界から美しいものを取り出して音にする」というような表現が出てくるので、映像としてもそれを追求したのかもしれません。
印象的だったのは、薄暗い部屋で長い間放置されていたピアノが、直っていくにつれて部屋に光が差し込んでくるという表現。
元通りになったピアノは、明るく柔らかな輝きに包まれていました。
見ているこちらの心境が、「不安・緊張」→「安らぎ・解放」と、うまく変化させられていました。
言葉による描写なしで、感情を変化させる。映像ならではですね。
『羊と鋼の森』を無料視聴できるVOD
2023年5月現在、この映画を追加料金なしで視聴できるVODは下記のとおりです。
- 『羊と鋼の森』を配信中のVOD
・U-NEXT(31日間の無料体験あり)
配信されている作品は時期によって変動するので、公式ページで確かめてみてくださいね。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
それでは今日もよい1日を!