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【伝授】電子ピアノでロシアピアニズムを学ぶためのヒント

美しい響きとレガートを作るロシアピアニズムっていいなあ。
でも、家で音が出せなくて電子ピアノしか置けない…
習得は無理なのかな…?


こんな疑問に答えます。

こんにちは!ゆきおです。

ピアノが好きだけど、「家の事情でどうしても本物のピアノを置けない!」という方は多いですよね。

集合住宅だから、
戸建てだけど防音設備もないしご近所に迷惑だから、
引っ越しが多いから、
家族の理解を得られないから、などなど...


僕自身も、集合住宅に住まざるを得ない状況で、電子ピアノしか置けませんでした。
そんな中、ロシアピアニズムの世界に夢中になってしまったのです。
(「ロシアピアニズムってなに?」という方は、こちらの記事をご覧ください)

美しい響きと音色を手に入れたいのに、日頃の訓練は電子ピアノでしかできない...
電子ピアノだと、あらかじめシミュレートされた音しか出てこないので、本物のピアノとのギャップがあるのです。

手探りなので苦しみましたが、「何とかして習得したい!」といろいろ試して、効果が出た方法を見つけることができました。

同じような悩みを抱えていらっしゃる方のために、お伝えしていきますね。

電子ピアノであっても、工夫次第でロシアピアニズムを学ぶことは可能


結論からいうと、家に電子ピアノしか置けなくても、上達は可能です。
理由を解説します。

身体の使い方の訓練は十分できる


電子ピアノでも、身体感覚の訓練は可能です。

ロシアピアニズムでは、日本で主流の奏法とは身体の使い方がかなり違います。
そのため、時間をかけて、シンプルで基礎的な動きの感覚を身につけていくのが大切。

例えば、下記のような感覚です。

  • 鍵盤に指を「置く」感覚
  • 手首の脱力・柔軟性(手首の呼吸)の感覚
  • 指の関節を固めずに弾く感覚
  • 手のひらのV字筋や虫様筋を使う感覚
  • 手が旋回運動をする感覚
  • 身体の重さを指先まで伝える感覚
  • 背筋や胸筋、前腕の屈筋を働かせて、タッチを細かく調整する感覚
  • 鍵盤の浮力を感じながら弾く感覚



他にもありますが、だいたいこんな感じ。


もちろん本物のピアノで練習できるのが一番ですが、電子ピアノでも身体感覚をつける訓練はできます。


そして、電子ピアノにも、本物のピアノに勝るメリットがあります
それは、「無音で練習できること」です(笑)
これについては、次の章で解説します。

耳の訓練には、ピアノを弾く以外の方法もある


響きを重視するロシアピアニズムでは、耳の訓練は必須です。
なぜなら、聴く力がないと、そもそも練習にならないから。

しかし、工夫次第で、ピアノがない環境の方も訓練していくことができます。

最初のころには、下記のような訓練が必要です。

  • 音を鳴らしたときに、基音だけでなく倍音が鳴っているのを聴きとる
  • 響きの減衰を聴き取る(レガートを作るために必要)
  • 音色のちがいを聴きとる



聴き方の訓練については、下記の記事で書いています。
これは、ピアノがなくてもできますよ。



また、最初のころは、本物のピアノがあってもおそらく自分では良い響きを出せないはず。

大事なポイントは、自分の中に「理想の響きのイメージ」をできるだけ明確に作ることです。



そのための近道は、すてきな演奏をたくさん聴くことです!

  • ロシアピアニズムのピアニストのコンサートにたくさん行ってみましょう!
  • コンサートに行けないときは、録音をたくさん聴きましょう!



きっと音色の違いがわかるようになってきて、理想の響きのイメージもできていきますよ。

全身全霊で聴きがちですが、リラックスしていた方が響きが聴こえてきやすかったりもします。
楽しむことも忘れないでくださいね(笑)

上記のような耳の訓練は、家にピアノを置けなくてもできますよね。
いろいろやりつつ、外で本物のピアノを弾く時間もつくっていきましょう。

 家に電子ピアノしかなくても、練習室を併用すればいい


電子ピアノで出来ることもありますが、やはり本物のピアノで練習することは必須です。
でも大丈夫です、ピアノが弾ける施設を利用すればOK

実は、ロシアピアニズムの教室に通い始めるとき、
「電子ピアノしかないなら、まず環境を整えてからにしてください...」と断られそうになったんです(笑)


「毎週、必ず練習室を借りて本物のピアノで練習するので、そこを何とか!」という感じでお願いし、レッスンしてもらえることになりました。

「でも、練習室ってけっこうお金かかりそう…」と思われる方もいると思います。
確かに、検索してすぐヒットするところは安くないことが多いです。

地域による部分もありますが、実は、安くピアノを弾く方法があります
僕は、下記のような場所で練習しています。

  • 1時間200円で、多目的室のグランドピアノを貸してもらえるコミュニティセンター
  • 2時間まで無料で、アップライトピアノがある音楽室を貸してくれるコミュニティセンター
  • 広くてしっかり防音がされた練習室で、グランドピアノを1時間500円で弾ける文化会館
  • 1時間800円で、フルコン(フルコンサートグランドピアノ)で練習させてもらえる美術館(しかも広くて天井が高いから残響が気持ちいい)



中古のグランドピアノに100万出す代わりに、1時間200円なら5,000時間練習できる計算になりますね(笑)

見てお分かりになった方もいると思いますが、ポイントは自治体が運営する施設を探してみることです。
お住まいの市町村のHPから、施設を検索して、ピアノが弾けるか調べてみてくださいね。

ちなみに、上記の施設は、すべて東京都武蔵野市です。
実家がある東京都町田市や、現在住んでいる長野県佐久市にも、ピアノが安く弾ける公共施設は見つかりましたよ。

以上、なんとなく「電子ピアノしか置けなくても上達できそう」な気がしてきませんか?

自分のおかれた環境で、何ができるかを考えるのが建設的ですよね。



次章では、効果を実感した練習方法を具体的にお伝えしていきます。

電子ピアノを使いながらロシアピアニズムを学び、上達を実感できた練習方法


ここからは、効果を実感した練習方法をお伝えしていきます。

ピアノと電子ピアノは似て非なるものです。
その違いを押さえたうえで、効果的な練習をしていく必要があります。

電子ピアノは「シーソー式木製鍵盤」のものを選ぼう


まず前提のお話ですが、できるだけ本物のピアノに近いタッチの電子ピアノを使いましょう

ロシアピアニズムのタッチの練習では、鍵盤の浮力(押した後に勝手に戻ってくる力)を利用する感覚を身につけることが重要です。



「シーソー式木製鍵盤」の電子ピアノなら、タッチの感触は本物のグランドピアノとほぼ変わりません

一方で、シーソー式でないと、変な身体感覚がついてしまう可能性も、、
実際のピアノとはかなり感触が違うためです。

「シーソー式木製鍵盤」のモデルは、YAMAHA、KAWAI、Roland、CASIOなどが作っています。
長い目で見ると、少し高くても本物のピアノに近いタッチのモデルにするのが良いかと。

ちなみに僕は、38万円ほどのCASIOの電子ピアノを、恥ずかしながら36分割で買いました(無金利だったので)。
モスクワ音楽院・大学院を卒業され、2021年のピティナ特級で入賞された今泉響平さんも、夜間用として同じモデルを使われているそうです。

本物のピアノとのギャップを埋めていく


仕方がない事実として、やはり電子ピアノと本物のピアノの間にはギャップがあります。
何とかして、それを埋めていかなければなりません。

僕は、下記の練習でギャップを埋めていました。

 電子ピアノで練習しながら、いろいろタッチを変えてみて、「実際はこんな音が出そうかな」と頭の中でイメージを作る

 練習室に行って、家で試したタッチで弾いてみる。想像もしなかった音が出たりするので、どのタッチでどんな音が出るか、感覚をつかんでいく

 家に帰ったら、「実際のピアノで出てきた音とタッチの組み合わせ」を思い出しながら、弾いてみる



ひたすら、この繰り返しです。

意識的にこれを繰り返していくと、電子ピアノで練習している時も、「このタッチなら、本物のピアノではこういう音が出ている」ということがわかるようになってきます

とにかく量をこなすことが大切です。
僕は、土日に練習室に行くときは、4時間ほど時間をとっていましたよ。

下部雑音が分かりやすい無音練習をしてみる


ここで、先ほど少し触れた「無音練習」を紹介します。

電子ピアノは音を消せるので、下部雑音が分かりやすいです。

下部雑音とは、鍵盤が底に当たったときに発生する衝撃音のこと。
音の波形に影響をあたえるので、倍音が出にくくなり、音も固い感じになります。

無音で練習すると、自分のタッチが「良い音」と「微妙な音」のどちらを生むのか、だいたい区別がつくようになります。

具体的には、下記のような感じです。

  • 下部雑音が多いタッチ

    「ゴッ」という、重めの鈍い音がする
  • 下部雑音が少ないタッチ

    「トンッ」という感じで、衝撃感がなく、澄んだ感じの音



なお、強い音を出すと下部雑音が多くなる、というわけではありません
同じ音量でも、ポイントは「指が底につく前に脱力(または寸止め)できているか」です。

家で少し試したら、そのタッチを本物のピアノでも試して、音の違いを聴いてみましょう。
いい響きが出ているようなら、いつでもそのタッチができるように、家で練習できますよね。

本物のピアノで下部雑音をしっかり感じてみたいときは、高音域や、フルコンなどサイズの大きなピアノだと分かりやすいと思います。



しかし、本物のピアノでは音に気を取られてしまい、下部雑音が聴きにくいことも...
中・低音域では、かなり聴きにくいです。

お客さんとして聴いていると、よく分かるんですけどね。
自分で弾いてる時はわからないという(笑)
耳が良くないのかもしれませんが。

ちなみに集合住宅の場合、ゴンッという下部雑音が少なくなると、下の階へ響く音も緩和されます
良い響きが出るようになって、近所迷惑にもならない。一石二鳥ですね!

あきらめないで!電子ピアノでも工夫しだいで上達します!


今回は、電子ピアノで良い響きを手に入れるための練習方法について書いてきました。
大事なのは、「自分のいる環境で、何ができるか」を考えることです。

ご紹介したことを、おさらいしておきます。

  • ピアノがなくてもできる、倍音を聴く訓練
  • 演奏や録音をたくさん聴く
  • 本物のピアノとのギャップを埋めていく練習
  • 無音練習



今回お伝えしたもの以外にも、僕が見つけられていない効果的な練習方法がきっとあるはず
ぜひ、いろいろ試してみてくださいね。

いい練習方法がありましたら、教えていただけると嬉しいです。

下記のページでは、当ブログのロシアピアニズムに関する記事をまとめています。
よろしければ、どうぞ。



最後まで読んでいただきありがとうございました。
それでは、今日もよいピアノライフを!

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