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「物語」の力。『海の上のピアニスト』の映画情報とレビュー



映画『海の上のピアニスト』イタリア完全版を観ました。
たくさんのメッセージが込められた、素敵な映画でした!

映画紹介とレビューを書いていきます。
『海の上のピアニスト』が配信されているVODも紹介しますね。

この映画は、こんな方におすすめ

・ヒューマンドラマの名作が観たい
・音楽の力を感じたい
・進むべき道に迷っている

『海の上のピアニスト』映画情報とあらすじ

"ニュー・シネマ・パラダイス"の監督が送る海の上の奇跡が4Kデジタルで美しく蘇る。『海の上のピアニスト 4Kデジタル修復版&イタリア完全版』11.18 (水)発売
  • 基本情報
原題La leggenda del pianista sull'oceano
英題The Legend of 1900
監督ジュゼッペ・トルナトーレ
主な出演ナインティーン・ハンドレッド:ティム・ロス
マックス:プルイット・テイラー・ヴィンス
少女:メラニー・ティエリー
上映時間170分(イタリア完全版)
  • あらすじ

大西洋を巡る豪華客船の中で、生後間もない赤ん坊が見つかった。
彼の名は1900=ナインティーン・ハンドレッド。
世紀の変わり目を告げる1900年に因んで名付けられた。
彼は船内のダンスホールでピアノを演奏し、類稀な即興曲を次々と作り出していった。

そんなある日、彼は船内で出会った美しい少女に心を奪われてしまう。
彼女が船を去った後、断ち切れない彼女への想いから人生で初めて船を下りることを決心する…。

公式サイトより引用:https://synca.jp/uminoue/

『海の上のピアニスト』のレビュー・感想

  • この映画から受け取ったメッセージ

    ・私たちの価値観は、一人ひとり違う。「当たり前」とか「常識」は、無意味なこともある。

    ・自分の欲のためでなく、魂から生まれるエネルギーで他人を幸せにしようとしている人は、別次元の輝きを放つことができる。

    ・「物語」には、人を夢中にさせ、心を動かし、行動させる力がある。


上記について、それぞれ少し踏み込んでみます。
ネタバレしないように抽象度を上げて書いていますが、気にされる方はここでストップするか飛ばしてくださいね。

価値観の違い

船上で生まれ育ったナインティーン・ハンドレッド。
船から降りることを考えない彼に、周りの人たちは「お金持ちになって、立派な家に住んで、奥さんと子供と暮らすのが幸せというもの。君にはそれができるんだから、手に入れなさい。」と勧めたり、儲け話をします。

さぞ当たり前のように話すのですが、ナインティーン・ハンドレッド自身は富も名声も求めていないのです。
「幸せ」の価値観がそもそも違う。

第三者として見ていると、説得してる人がなんだか俗っぽく見えるんですよね。
しかし同時に、「これ、自分もやっているんじゃ?」となんだか怖くなりました。
自分の価値観を、さも世の中に共通する価値観であるかのように捉えてしまう…
思考に対して、客観的な視点を持てるように努力しようと思いました(汗)

人の幸せを願うこと

人の幸せを願う…この作品にはそんなテーマが根底にあると感じます。

ナインティーン・ハンドレッドは、天才ピアニストでありながら、富も名声も求めていません。
彼に「ピアノ対決」を挑む人も出てきますが、その人が持っているのは「自分の力を証明したい」という価値観ですね。
悪く言ってしまえば、「もっと自分を見て!」と言っているような…。

ナインティーン・ハンドレッドは、音楽を奏でたい衝動が心の底から湧き上がっていて、自分の音楽で人を幸せにしたいと思っていたからこそ、圧倒的な輝きを放ち続けることができたのでしょう。

出会った少女が船を降りていくシーンでも、人の幸せを願うことの尊さが表現されているように思います。
「自分のため」の言葉はかき消されて届かなかった、しかし「何の見返りもなく相手の幸せを願う」言葉はスッと届いたのだと解釈しています。

「物語」のもつ力

この作品における大きな転換点では、「物語」が重要な役割を果たしています。
マックスの語る物語、農夫や少女の語る物語…
物語が、固く閉ざされた心を動かし、夢中にさせ、パラダイムシフトを起こし、行動させていくのです。

物語の重要性は普遍的なもので、それこそ言葉が生まれた原始時代から今日まで、人は物語を作り続けてきました。

私たちの人生の重要なポイントを思い返してみても、そこには物語が関わっていませんでしたか?
人の成功を聞いて自分も何かやろうと決心する、失敗を聞いたことに影響されて行動できなかった、などなど。
倫理観や信念の形成にも、物語が大きく関わっていますよね。

この作品では、物語によって価値観や行動が変わっていく人々を描くことで、その大きな力を浮き彫りにしていると思います。

これはマックスの物語⁈

この作品はピアニストの生涯を題材にしていますが、僕は「マックスの再生の物語」だと思っています。

マックスは、ナインティーン・ハンドレッドの人生を語りながら、消化しきれていない過去の葛藤と向き合います。

過去の葛藤と、自分の中にあった本当の想いに気づき、それらが統合されて人生の新しいステージに進むことができたのでしょう。
そのとき彼が手にしたのは、「人の心を動かす物語」でした。

彼はこの映画の最後のシーンのあと、大切な友人の物語を世の中に伝えて、多くの人に勇気と希望を与えていったんじゃないかと考えています。

『海の上のピアニスト』の音楽と映像


この映画の音楽と映像についても、少し書いておきます。

音楽について

モリコーネ氏の音楽は、やっぱりハンパないですね!
心が揺さぶられまくります。

ストーリーや映像に音楽が合わさり、ひとつのシーンを作るという、ごく当たり前のことが行われているのですが...
これはもはや1+1+1=3なんてもんじゃない。
1+1+1=30みたいな感じです(笑)

オリジナル曲というのも大事な要素じゃないかと思います。
知っている曲が使われていると、自分の中にある曲の印象と、映画のシーンがアンマッチを起こしてムズムズした違和感を感じることも。

ひとつの美しいメロディーが、少しずつ変化しながら全体を通して使われているので、鑑賞後は脳内エンドレスリピートとなることでしょう(笑)

サブスクでサウンドトラックも聴けますよ!

映像について

フィルムで撮られた映像って、やっぱり素敵だなあと思いました。
現代のキレッキレの映像とは違う、温かみのある描写。
フィルム特有の粒状感がたまりません。
毛穴まで映るほどバキバキに解像してればいいってもんじゃない(笑)

マンホールから蒸気の吹き出す1920年頃のニューヨークも、郷愁を誘いますね。
『Once Upon a Time in America』や『華麗なるギャツビー』を思い出しました。

『海の上のピアニスト』を無料視聴できるVOD


2023年5月現在、この映画を追加料金なしで視聴できるVODは下記のとおりです。
意外と少ないですね。

  • 『海の上のピアニスト』を配信中のVOD

    U-NEXT


まだU-NEXTを使ったことのない方は、31日間の無料体験もできます。
配信されている作品は時期によって変動するので、公式ページで確かめてみてくださいね。


最後までご覧いただき、ありがとうございました。
それでは今日もよい1日を!

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