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パリが舞台の成長物語。『のだめカンタービレ 最終楽章』の映画情報とレビュー


久々に、映画『のだめカンタービレ最終楽章』を観ました。

コメディ、エンタメ要素強めですが、音楽への愛に溢れています。
さらに「ダークサイド」の物語の型を使うことで、音楽の分野にとどまらない普遍的なものを描いている映画です。

映画紹介とレビューを書いていきます。
『のだめカンタービレ最終楽章』が配信されているVODも紹介しますね。

この映画は、こんな方におすすめ

・コメディと人間ドラマがバランス良く混ざり合った映画を見たい方
・クラシック音楽が好きな方

『のだめカンタービレ最終楽章』映画情報とあらすじ

映画『のだめカンタービレ 最終楽章 前編』予告 出演:上野樹里/玉木宏
  • 基本情報
監督武内英樹(前編)
川村泰祐(後編)
脚本衛藤凛
主な出演野田 恵:上野樹里
千秋 真一:玉木宏
峰 龍太郎:瑛太
三木 清良:水川あさみ
フランク・ラントワーヌ:ウエンツ瑛士
タチヤーナ・ヴィシニョーワ:ベッキー
孫 Rui:山田優
フランツ・フォン・シュトレーゼマン:竹中直人
配給東宝
公開2009年(前編)
2010年(後編)
日本
上映時間121分(前編)
123分(後編)
  • あらすじ

「ルー・マルレ・オーケストラ」の常任指揮者となった千秋は、初めて楽団員と会い、資金不足から来る彼らのやる気のなさに驚愕する。
一方、音楽留学中ののだめは勉強に追われる日々を送っていたが、ある日、千秋から定期公演でのピアノ演奏を頼まれ…。(前編)

千秋に恋するのだめは演奏者としての技量は彼と同じでありたいと願っていたが、千秋と孫Ruiの共演の話を聞き、焦りを募らせる。
さらに、ふたりの共演で演奏されたは、のだめが千秋とやりたいと願っていた楽曲だった。
微妙にすれ違っていくふたりの行方は…?(後編)

U-NEXTより引用

『のだめカンタービレ最終楽章』のレビュー・感想


ここからは、感想とレビューを書いています。

ネタバレありです。
セリフを引用したり、内容にも触れていますので、気にされる方はここでストップするか飛ばしてくださいね。

のだめと千秋、2人の違いとそれぞれの成長

この映画は、TVドラマの物語の延長線上にある、完結編です。
物語全体を通して、のだめと千秋という2人の主人公の成長が描かれます。

物語ではたいてい「敵対する力」が描かれるのですが、この映画の場合、それは何でしょうか?

それは「自分自身」でしょう。
敵が外にいる男性的な物語(少年漫画によくある)と違い、内面的な物語です。
(もしこれが、コンクールで勝つことに主眼をおいたストーリーなら、男性的な物語にもなり得ますが)

この映画では、2人がそれぞれ「覚悟を決める」過程が描かれていきます。

のだめは、「音楽と共に生きていく覚悟」。
千秋は、「のだめと共に生きていく覚悟」。


これは、お互いに「相手は持っているけど自分が持っていないもの」。

2人が自分自身と向き合って覚悟を決め、足りていなかったものを埋めることで、
私たち観客も「もうこの2人なら大丈夫だ」とスッキリを幕を迎えることができるのです。

千秋の変化

千秋は、TVドラマ編で既に大きな成長を遂げています。

人を信じない独善的ナルシストから、人と心を繋ぎ、調和した音楽を奏でる指揮者へと成長しているのです。
この映画でも、千秋は指揮者として困難にぶつかりはしますが、すでにステージが上がっているので安心して見ていられます。

この映画における千秋の大きな変化は、指揮者としてではなく、のだめへの向き合い方です。

「のだめの音楽」と「のだめ本人」、どちらに惚れているのか、千秋はときどき分からなくなっているようでした。
のだめの言動が本気なのかギャグなのか図りかね、つい適当にあしらってしまうのですが...

のだめが離れていくことで、ようやく大切なことに気づきます。

千秋
「いつの間にか、一番大事なのはあいつとの未来になってる...」


そして、のだめと一緒に生きていく覚悟を決めたのです。

ダークサイドと、のだめの成長

一方の、のだめ
彼女がヨーロッパに留学したのは、「千秋先輩と一緒にいたいから」というのも大きな理由です。
そしてこの映画の後編の途中まで、次のように言っています。

のだめ
「千秋先輩と一緒にコンチェルト(協奏曲)を弾くのが、のだめの最終目標なんです」


つまり、音楽<千秋。
千秋も先生も、その考え方ではいけないということが、よくわかっている。
そして、のだめが、「何があっても音楽と共に生きる覚悟」を決められるように導いているのです。


しかし、のだめは可哀想なほどに打ちのめされていきます。

音楽に向き合っているつもりなのに、認めてもらえない悔しさと、叩きつけられる周りとの実力差。
それによって千秋の気持ちまで離れていってしまうのではないか、という焦り。


のだめの苦悩と葛藤が頂点に達したところに、シュトレーゼマン(指揮者)が現れ、
「千秋なんて放っておいて、私と協奏曲を演奏しましょう」と手を差し伸べます。

ここは、あからさまに「悪魔との契約」として描かれているのです(シュトレーゼマン=悪魔)。
西洋音楽の世界なので、メフィストフェレスになぞらえているのでしょうね。

この展開は、いわゆる「ダークサイド」に堕ちる瞬間です。
「闇からの誘い・闇堕ち」は、スターウォーズや鬼滅の刃など、さまざまなストーリーで使われています。

心の奥にある「光り輝く記憶」によって闇から抜け出せる、という展開も同じ。
のだめの場合は、千秋との初めての連弾の記憶でした。

ダークサイドを抜け出したのだめは、人間として、音楽家として、次のステージに上がることができたのです。

のだめ
「先輩とだったら、いつか最高のコンチェルトができると思います。
でもそれで終わりじゃないんですよね。
その演奏を超えるために、また音楽に向き合っていく。」


のだめが、音楽家として生きていく覚悟を決めた瞬間でした。
音楽家として、ようやく精神的に自立したとも言えます。

こうして、のだめも千秋も、
「何があっても音楽を続けていく覚悟」「共に生きていく覚悟」を決めました。

最後にクライマックスを持ってきて全てを解決するピークエンドにより、爽快なラスト。
めでたしめでたし、ですね。

『のだめカンタービレ最終楽章』の音楽


音楽についても、少し書いておきます。

この映画は、音楽映画の中でも珍しいほど、演奏シーンが長いと思います。

たいていの映画だと、演奏シーンは長くても3分〜4分程度。
しかし本作は、6分以上演奏する場面もあります。

さらに、曲の解説をモノローグ形式で流してくれるので、
あまりクラシックに馴染みがない人でも親しみやすいように作られています。

演奏の吹き替えが大物すぎてびっくりするのですが、
オケを担当するのは飯森範親さんや大友直人さんといった日本を代表する指揮者。

のだめのピアノ担当は、なんと超人気ピアニストのラン・ラン
独創的な表現や多彩な音色は、のだめにぴったりですね。

音楽はもちろん素敵なのですが、玉木宏の指揮姿かっこよすぎだし、上野樹里もかわいすぎなので、目にも優しいです(笑)

サウンドトラック、なぜかラン・ランの演奏だけ聴けないのですが...

『のだめカンタービレ最終楽章』を無料視聴できるVOD


2023年5月現在、この映画を追加料金なしで視聴できるVODは下記のとおりです。

  • 『のだめカンタービレ最終楽章』を配信中のVOD

    U-NEXT(31日間の無料体験あり)

    Prime Video(30日間の無料体験あり)


配信されている作品は時期によって変動するので、公式ページで確かめてみてくださいね。

なお、この映画は単独でも見ても楽しめるように作られていますが、
ドラマ版を観るとより一層楽しめるのは間違いありません!

現在、FOD(フジテレビオンデマンド)でドラマ版を観ることができるようですが、無料体験はなさそうです。
(登録前に、作品が配信されているかどうか、チェックしてくださいね!)
FODの公式ページ


最後までご覧いただき、ありがとうございました。
それでは今日もよい1日を!

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