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芸術と、痛み。『マイバッハ 不屈のピアニスト』の映画情報とレビュー



映画『マイバッハ 不屈のピアニスト』を観ました。
信じられないほど壮絶な人生を送ってきたピアニストの伝記映画です。

映画紹介とレビューを書いていきます。
この映画が配信されているVODも紹介しますね。

この映画は、こんな方におすすめ

・何度もどん底に叩き落とされながら、運命と闘い続けた人生を追体験したい

『マイバッハ 不屈のピアニスト』映画情報とあらすじ

血の滲んだ鍵盤が奏でる圧巻の演奏シーン/映画『マイ・バッハ 不屈のピアニスト』本編映像
  • 基本情報
原題João, o Maestro
監督マウロ・リマ
主な出演ジョアン・カルロス・マルティンス
:アレクサンドロ・ネロ
ジョアン・カルロス・マルティンス(少年時代)
:ダヴィ・カンポロンゴ
ジョアン・カルロス・マルティンス(青年時代)
:ロドリゴ・パンドルフ
ジョゼ・マルティンス:ジュリオ・ロペス
カルメン:アリーン・モラエス
製作年2017年
上映時間117分
  • あらすじ

幼い頃からピアノが得意だったジョアンは、瞬く間にとその才能を伸ばし、20歳でクラシック音楽の殿堂として知られるカーネギーホールでの演奏デビューを飾り「20世紀最も偉大なバッハの奏者」として世界的に活躍するまでになる。
一流の演奏家として世界を飛び回っていたジョアンだったが、不慮の事故により右手の3本の指に障害を抱えてしまう。
ピアニストとしての生命線である指が動かせなくなった彼は、不屈の闘志でリハビリに励み、再びピアニストして活動できるまでになる。
ついに復帰を果たし、自身の代名詞ともいえるバッハの全ピアノ曲収録という偉業に挑戦をしていた彼にさらなる不幸がのしかかる…

Amazon prime videoより引用

『マイバッハ 不屈のピアニスト』のレビュー・感想

  • この映画から受け取ったメッセージ

    ・何かに執着することは、痛みを伴う。しかし、痛みを引き受けることで人生のステージを次に進めることができる。


ここからは、上記について少し踏み込んでみます。
内容やセリフを引用しているので、ネタバレありといえます。
気にされる方は、ここでストップするか飛ばしてくださいね。

芸術への執着は、「破滅的な探究」?

ジョアンはピアニストとして名を上げてから、病気や事故など数々の試練に見舞われます。

しかし彼は、狂ったような執着心で音楽を追い求め続け、生活や健康を破壊していきます。
そして奥さんにこう言われるのです。

「辞書にこう書いてあったわ。芸術への執着は、「破滅的な探究」だと。...破滅へ向かっているのよ。」

物語をつなぐように時折流れるショパンの「雨だれ」は、明るく希望に満ちた響きから、暗く破滅的な響きに変わっていきます。

映画の冒頭で、詩人オスカー・ワイルドの「芸術は痛みによってのみ完成される」という言葉が引用されています。
ジョアンに襲いかかったのも、数々の痛み。何度乗り越えても、新たな、より大きな痛みが現れます。
見てるこっちも辛いですが、本人がどれだけダメージを受けたかは想像を絶しますね…

しかしジョアンは闘い続けました。
なぜ彼はやめなかったのでしょう?
幼少期、彼の父親がピアノの先生に話していた言葉に答えがあると思います。

「あの子がピアノを愛する理由は、あの子の心の奥にある。」

彼には、音楽以外で生きる道がいくらでもあったことも描かれています。
ピアノから離れた時期は、他の分野でも成功者になっているのです。
しかし心の底から音楽を求め、愛していたからこそ、どれだけ苦しくても音楽の道を進み続けることにしたのでしょう。

最後のシーンの演奏では、痛みと歓喜が統合して描かれています。
使える指はほとんどない。その痛みを受け入れ、本当に幸せそうな微笑みをたたえながら、素晴らしい演奏をしているのです。

ジョアンの人生を見ていると、まさに「芸術は破滅的な探究である」という言葉がぴったりです。
しかし、狂ったようにのめり込んだからこそ、大きなリターンを得ることができたのでしょう。
彼が受けた痛みは、自己実現につながっただけでなく、そのおかげで自分の役目にも気づくことができました。
基金を作って多くの音楽家を育て、芸術の世界全体に貢献することができたのです。

エンドロールのとき、自分自身の中にある「心から求めているもの」について少し考えてしまいました。
思えば、今まで夢中になってきたものは、痛み(ジョアンとは比べ物にならないほど小さいですが笑)を感じた段階で「これ以上は無理だ」と無意識的にブレーキを踏んでいたように思います。
そこが、限界を越えて次のステージに進める人との境目なのでしょう。
次そんな局面を迎えたら、今度こそは!

『マイバッハ 不屈のピアニスト』の音楽と映像


この映画の音楽と映像についても、少し書いておきます。

音楽について

ピアニストの伝記映画なので、演奏シーンが多いです。
しかし鍵盤に齧り付かんばかりのフォームが気になって、ちょっと集中できない(笑)

「なんか音質悪くない?」と思うこともあったのですが、実は演奏シーンの音源は、実際にジョアン氏が弾いたものだということ。
古い音源だったのですね。

少し鍵盤を叩いてる感じで、僕はあまり好みではありませんでしたが、切迫した激情が印象的です。

最後のシーンの演奏は、困難を乗り越えてきた者だけが手にできる、慈愛に満ちた音楽で素晴らしいです。

サウンドトラックも出ています。

映像について

彩度低め、コントラストもしっかりしていて、まさにドキュメンタリー調の映像です。

暗いエネルギーが流れる不安定なシーンが多いだけに、映像表現もけっこうシリアスですね。
ブラジルにいた頃の描写は、ちょっと湿度が高そうな空気感が伝わってきて素敵でした。

『マイバッハ 不屈のピアニスト』を無料視聴できるVOD


2023年5月現在、この映画を追加料金なしで視聴できるVODは下記のとおりです。

  • 『マイバッハ 不屈のピアニスト』を配信中のVOD

    U-NEXT(31日間の無料体験あり)

    Hulu(2週間の無料体験あり)


配信されている作品は時期によって変動するので、公式ページで確かめてみてくださいね。


最後までご覧いただき、ありがとうございました。
それでは今日もよい1日を!

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