MOVIE MUSIC Piano

女神様の素顔。『アルゲリッチ 私こそ、音楽!』の映画情報とレビュー


クラシックに興味がなくても、名前を聞いたことがあるであろう大ピアニスト、マルタ・アルゲリッチ。
2度結婚・離婚しており、3人の娘はそれぞれ父親が違うなど、奔放な人物としても知られます。

このドキュメンタリーは、実の娘であるステファニー・アルゲリッチが監督としてカメラを回した作品です。
娘から見るアルゲリッチは、思っていたよりずっと繊細で、人間味にあふれていました。

映画紹介とレビューを書いていきます。
『アルゲリッチ 私こそ、音楽!』が配信されているVODも紹介しますね。

この映画は、こんな方におすすめ

・アルゲリッチのことをもっと知りたい方

・世界的スターである音楽家の生活や葛藤を知りたい方

※画像は公式サイトより引用

『アルゲリッチ 私こそ、音楽!』映画情報とあらすじ

  • 基本情報
原題Bloody Daughter
監督ステファニー・アルゲリッチ
主な出演マルタ・アルゲリッチ
スティーブン・コヴァセヴィッチ
シャルル・デュトワ
リダ・チェン
アニー・デュトワ
ステファニー・アルゲリッチ
配給ショウゲート
公開2012年
フランス・スイス合作
上映時間96分

  • あらすじ

子供の頃から類稀な才能を発揮し、16歳で既に“生ける伝説”と呼ばれたマルタ・アルゲリッチ。
麗しい美貌とは裏腹に、力強く圧倒的な演奏でたちまち世界中にその名を広げ、以降、約50年以上に渡りクラシック界の“女神”として君臨し続けている。
しかし、スキャンダラスな私生活や気分屋で情熱的な性格は有名で「奔放な性格も彼女の芸術の一部」と称される。
本作はそんな彼女のこれまで明かされる事のなかった演奏会の裏側、家族との姿、3人の娘たちの想い等、極めてプライベートな部分に迫り、核心を掘り下げてゆく。

公式サイトより引用

『アルゲリッチ 私こそ、音楽!』のレビュー・感想


ここからは、感想とレビューを書いています。

ネタバレはありませんが、セリフを引用したり、内容にも触れています。
気にされる方はここでストップするか飛ばしてくださいね。

アルゲリッチの素顔

アルゲリッチの印象といえば、やはり「神がかった鮮烈な演奏!」という方もいるでしょう。
僕もそうです。

しかしこの映画で彼女のプライベートな姿を見て、人間らしい側面が見えて印象が変わりました。

どれだけ世界中の人に愛されていても、愛する娘たちがいても、
彼女の中に存在するのは、満たされない思いと孤独。

しかも娘さんが言うには、30年以上、そういった感情を抱え続けているそう。

昨日紹介したシーモアさんがいう通り、いくら外に救いを求めても満たされず、
救いは自分の中で見つけることができるのでしょう。
もちろん、簡単なことではないでしょうが...

それはともかく、間違いなく言えるのは、アルゲリッチが家族も音楽も深く愛していることです。

この映画を観たことで、演奏で表出してくる彼女の愛情深い一面を、以前より容易にキャッチできそうな気がします。
聴衆である私たちも人間なので、なんだかんだ、演奏者の背景にある「ストーリー」に印象が左右されますよね。

逆にいえば、印象操作している人もいるだろうということ。
良い耳を育みつつ、もっと音楽を楽しむ要素として「ストーリー」をキャッチしていけたらいいですね。

芸術家の子どもに生まれた葛藤

アルゲリッチの娘で、本作の監督であるステファニーは、音楽家の両親を持つことで様々な葛藤を抱えていました。

幼い頃から演奏旅行について回り(「行かない!」と言ったら母も「じゃあ私も行かない!」と言うので)、移動中やステージで、母の先が読めない行動にいつも振り回されていたことを語っています。
もちろん、一緒にいられることの喜びもあったそうですが!

特に印象的だったのは、次の言葉です。

「私の人生は、母を追い続けるためにあるのだろうか。
逃げ出せても、また捕まる。
母は、いつでもどこにでもいる。」


世界中で愛されているピアニストの娘が、母の影響力から逃れるのは非常に困難ですよね...
自分の人生を歩みたいと思っても、どこの国へ行っても、「アルゲリッチの娘」として見られてしまう。
しかも、彼女の父親も大ピアニストなのです。

それらを乗り越えて映画監督になり、家族としてこのドキュメンタリーを撮影したと思うと、いっそう心に響いてきますね。

『アルゲリッチ 私こそ、音楽!』の音楽と映像


この映画の音楽と映像についても、少し書いておきます。

音楽について

演奏は、改めて言うまでもなく素晴らしい!
激烈でヴィヴィッド、しなやかさとキレの両立。そして美しい響き。
邦題のとおり、彼女は音楽と一体化しています。

小学生の頃に大好きだった「英雄ポロネーズ」のCDは、実家で改めて見てみるとアルゲリッチの演奏だったのを思いだします。
だからあんなに夢中になったのかー、と納得。

下記はデビューアルバムです。
最初のジャケットがこれって、インパクト強すぎ(笑)
もちろん中身も衝撃的ですが。

映像について

ホームビデオ感があるのがすごくいいですね。
家族でないと、ここまでプライベートに踏み込んだ映像は撮れないでしょう。

また、娘さんたちが幼いころに遊びながら撮っていた映像が、いつか映画になるなんて思いもしなかったでしょうね!
その頃のアルゲリッチの家は、いつでも誰でもウェルカムな「共同生活」だったようです。
とんでもない家って感じもしますが、子供にとってはいつでも好きなことができる「理想の遊び場」だったと。

また、演奏活動で忙しいアルゲリッチに代わって、留守番や子育てをしてくれた芸術家が沢山いたそうです。
普通じゃない人なので、普通じゃない生活をした方がうまくいくのも、ある意味納得。

『アルゲリッチ 私こそ、音楽!』を無料視聴できるVOD


2023年5月現在、この映画を追加料金なしで視聴できるVODは下記のとおりです。

  • 『アルゲリッチ 私こそ、音楽!』を配信中のVOD

    U-NEXT(31日間の無料体験あり)


配信されている作品は時期によって変動するので、公式ページで確かめてみてくださいね。


最後までご覧いただき、ありがとうございました。
それでは今日もよい1日を!

-MOVIE, MUSIC, Piano