ロシアピアニズムは「ピアノで人の声のように歌うこと」を重視してるから、声楽をたくさん聴いた方がいいって聞いたけど…
声楽はあまり知らないし、おすすめの歌手や作品が知りたいなあ。
あと、声楽を聴いてピアノ演奏に活かすには、どうすればいいんだろう?
こんな疑問にこたえます。
こんにちは!ゆきおです。
今回は、「声楽を聴いてピアノ演奏に活かす」ことがテーマです。
皆さんは、声楽はお好きですか?
実は、僕は数年前まであまり興味がなかったのです。
ロシアピアニズムを学び始めて、「ピアノを歌わせるために、声楽を聴くのが大切」ということを知りました。
いろいろ聴いてきて、今ではすっかり好きになりましたよ!
あまり声楽のことを知らない方でも楽しく読めるよう、書いていきますね。
声楽を聴くことは、ピアノ演奏に活かせます!
声楽を聴いて、ピアノ演奏に活かすことは可能です。
というか、必要です。
理由を解説します。
声楽をピアノに活かす方法
まずは、「ピアノを弾く人が声楽に関わること」について世界的ピアニストが話されている言葉を見てみましょう。
ショパンコンクールで優勝されたダン・タイ・ソンさんの言葉です。
(「あなたは本当に人が歌っているようなフレージングをしますが、声楽家のフレージングを研究したのですか?」という質問に対して)
出典:焦元博『ピアニストが語る!第三巻』より
「たしかに私は声楽が大好きです。とくにアルトの声が。
しかし、ピアノのフレーズの歌い方については、ナタンソン(モスクワ音楽院で彼が最初に師事した教授)に学んだところが大きいです。
彼の夫人はソプラノ歌手で、ナタンソンと一緒によくピアノを使って声楽のフレージングを研究していました。
どの音域で声の出し方を変えるべきか、口腔内でどのように音を共鳴させて音色や音質を変化させるべきか、細かく検討していました。
そのようにひとつのフレーズの中で表現の変化を考えることは、ピアノをどのように歌わせるかを考えるときにとても役立ちます。
その秘訣を掌握すれば、打楽器的な性質を持つピアノを人間の声のように豊かに歌わせることができます。
私は、ナタンソンの温かい指導に心から感謝しています。」
ダン・タイ・ソン
もうひとつ、ピアノを歌わせる大家のホロヴィッツに関する、興味深いお話を紹介しておきます。
彼と仲が良く、家にも訪れていたルース・スレンチェンスカの言葉です。
「彼がステージから離れていた日々、私はこの目で彼がイタリアのベルカント唱法のようにピアノで旋律を歌おうと、レコードを聴きながら苦心している姿を見ました。
出典:焦元博『ピアニストが語る!第三巻』より
彼はレコードで歌手が歌ったあるフレーズを聴いて、すぐにピアノに向かって同じように弾いてみて、最終的に声楽の旋律のひとつひとつのフレーズをピアノ作品の中でどのように再現するかを考えていました。
声楽のフレージングを器楽のフレージングに変換しようとしていたのです。
それも、すべての声部を…。
何千回もレコードを聴き、ひたすら苦しい修行に明け暮れていました。
何千回も試みて、微妙なタッチによる音色変化を体得し、何千回もフレーズを解体し、組み立て直していました!」
ルース・スレンチェンスカ
あのホロヴィッツが、そんな練習を…!
声楽を聴くことが彼にとっていかに重要だったか、よくわかるエピソードですね。
これらを踏まえると、もし自力で学ぶとしたら、例えば以下のようなことをしてみると効果がありそうです。
- 声楽家が、どのように音色や音質を変化させてフレージングしているか、録音を何度も聴いて分析する
- 分析した声楽的なフレージングを、ピアノ作品を演奏するときも適用できないか試してみる
ピアノ作品に取り組むときも、まずはピアノを弾かないで、自分で「声楽的に歌ってみる」のがよいと思います。
僕はそれをしていますが、効果を実感しています!
あとは、「歌唱的な作品」を選んで、ピアノで歌う練習をするのもよいと思います。
代表格は、やはりショパンの作品でしょうね。
特に初期のノクターンは、ショパンが声楽をピアノに置き換えようと苦心した作品なので、よいと思います。
声楽を知ろう!ジャンルと、その魅力を紹介
「声楽といっても、いろいろありすぎて、どれを聴けばいいか迷ってしまう」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
まずは声楽のジャンルを知っておくと、聴く作品を選ぶときに役立つと思います。
大きく分けると下記のとおり。
- オペラ
- 歌曲
- 合唱
それぞれ解説していきます。
オペラ
オペラでは、登場人物がセリフを歌うことによってストーリーが進んでいきます。
場面によっては合唱もありますね。
オペラにポピュラー要素などを取り入れたものが「ミュージカル」と思っていただくと、分かりやすいかと思います。
なお、ミュージカルではマイクを使いますが、オペラでは基本的にマイクは使われません。
オペラは大きな舞台で歌うことになるので、豊かな声で旋律を大きく描き出します。
客席で聴いていると「オケがあんな鳴ってるのに、なんでマイクもつけない歌声がこんなに聴こえるの⁈」とびっくりします!
イメージはこんな感じ。
音量にご注意ください!(笑)
歌曲
歌曲は、伴奏+歌唱のシンプルな編成。
歌詞と音楽のどちらも重要で、発音を大事にしながら歌います。
ときには語りかけるような表現も。
編成がシンプルなので、フレージングや音色などに集中して聴きやすいと思います。
イメージはこんな感じです。
合唱
アカペラや、オーケストラによる伴奏があるもの、オーケストラの中に入り込むものなど、いろいろな形式があります。
合唱に関しては、歌曲よりもタテの線(和声)がしっかりしているイメージです。
イメージはこんな感じです。
大好きなパレストリーナの曲!
ピアノでも、合唱の発想を取り入れた作品があります。
ショパン作品でしばしば現れるコラール(讃美歌)や、ドビュッシーの「沈める寺」の盛り上がるところなど。
次の章では、おすすめの声楽家を紹介していきますね。
声楽を聴いてみよう!おすすめの声楽家や作品を紹介
ここからは、僕の好きな演奏を紹介していきます。
気になる方が見つかりますように!
エリー・アメリング/Elly Ameling
透明感のある歌声がとても魅力的です。
歌声に少し息も混ぜてるのかな?というような柔らかい響きが聴こえる瞬間が好き。
なんと日本の歌まで原語で歌われていますよ!
エリーザベト・シュヴァルツコップ/Elisabeth Schwarzkopf
艶がありつつ、しっとりとした質感もある声が素敵です。
R.シュトラウスの歌曲もおすすめ!
フリッツ・ヴンダーリヒ/Fritz Wunderlich
柔らかい光を放つような、優しい歌声が大好きです。
ずっと聴いていたくなってしまいます。
ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ/Dietrich Fischer-Dieskau,
滑らかで温かみのある声。
シューマンやシューベルトの歌曲が好きで、よく聴いています。
ラトヴィア放送合唱団/Latvian Radio Choir
2022年の来日公演を聴きにいきました。
驚異的な響きで、ホールがこの世のものとは思えない空間と化していました!
この曲は、その時にも歌われていたブルックナーの「この場所は神が作り給う」。
声楽を聴くことで、もっと音楽が楽しくなります!
ピアノを弾く人に向けに声楽について書いてきましたが、いかがでしたか?
皆さんがお好きな作曲家の声楽作品を聴いてみるのもおすすめです。
「この歌詞にこんな音楽を合わせるんだ!」と新たな発見があって、より作曲家のことを深く知れると思います!
人気のショパンも声楽作品を残していますよ。
僕も、これからもいろいろな声楽作品を聴いていきたいと思います。
そのうちまた、おすすめをシェアさせていただきますね。
下記のページでは、当ブログのロシアピアニズムに関する記事をまとめています。
よろしければ、どうぞ。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
それでは、今日もよいピアノライフを!