ロシアピアニズムに興味があるけど、どのピアニストがロシアピアニズムなのか分からないなあ。
おすすめのピアニストを知りたい。
それだけじゃなくて、いったい何がすごいのか知りたい。
こんなニーズにこたえます。
こんにちは、ゆきおです。
本記事では、ロシアピアニズムのピアニストを紹介していきます。
ロシアピアニズムに興味を持ちはじめたころ、困ったことがありました。
それは、「どのピアニストがロシアピアニズムなんだろう?」ということ。
ピアニストについてまとめられている情報が簡単に手に入らなかったのです。
なので、作ってみることにしました。
ロシアピアニズムの世界にハマってむさぼるように聴いてきた経験から、ぜひ聴いてほしいピアニストを紹介します。
ここで紹介するのは、CDやサブスクで簡単に音源が手に入るピアニストとしています(他にも紹介したい方はいるのですが...!)。
なかには、ロシアピアニズムがベースなのか微妙なラインの方も入れました。
その場合は説明を付けています。
素敵なピアニストとの出会いがありますように!
※コメントを書いていますが、ただの音楽愛好家視点かつ主観たっぷりです。人によって感じ方は違いますので、ご了承ください。
※たびたび「サブスク」という言葉を使いますが、「サブスクリプション(月額制の音楽視聴サービス)」のことです。
※本ブログでは、意図しない著作権の侵害を避けるため、公式にアップされたと判断できない動画は掲載しないことにしています。
生演奏を聴いたことがある、おすすめのピアニスト
ここでは、コンサートで生演奏を聴いたことがあるピアニストのうち、特におすすめの13名を紹介します。
順番は適当です、どなたも本当に素晴らしいです。
ミハイル・プレトニョフ/Mikhail Pletnev
「これピアノ?」という音を出すピアニストです。
細かくて速いパッセージを弱音でひたすら弾き続けてるときなど、意味がわかりません。
会場で聴いた響きも異次元でした。
録音も多いです。
特に好きなのはモーツァルトのソナタ集(2005年録音の方)。
チャーミングでユーモアたっぷり、微細な表情の変化が楽しいです。
ショパンや、リストのソナタも、めちゃくちゃ個性的で何度も聴いてしまいます。
激しいのが好きな方には、カーネギーホールのライブ録音がおすすめ。
サブスクでアンコールまで聴けます。
「イスラメイ」での会場の盛り上がりようはとても楽しいです。
ダニール・トリフォノフ/Daniil Trifonov
イケメン!
それはさておき、「麗しい音」という言葉が頭に浮かんできます。
弾いているというより、触れているだけのようなタッチから生まれる麗しい音色。
情熱的な表現も持ち合わせながら、常に美しさを損なわないのがすごい。
オールバッハのプログラムを聴きにいきましたが、バッハ=ブラームス「左手のためのシャコンヌ」の長調になるところは浄化されるような感じで涙が出てきました。
セルゲイ・ババヤン/Sergei Babayan
なんだかおもしろい名前だなあ、ババ、、とか思った自分をぶっ飛ばしたいです。
会場で聴いたのはオールショパンのプログラム。
一緒に行った友人とは、「なんだか秘密の世界を覗き見てるような感じだったね」と話していました。
とてつもなく繊細で、秘めやかな、美の世界。
(どうでもいいですが、スポーツ選手のような逆三角形のガタイで驚きました)
オールラフマニノフのCDは、繊細さと激しさの両方を堪能できるのでおすすめです!
細かい音型はグループにして、響きの帯で色をつくっている感じが美しいです。
サブスクでも聴けます。
ネイガウスの伝統を受け継いだピアニストで、トリフォノフの先生だそうです。
反田 恭平
大人気の反田さん。
僕の先生は、反田さんはリスト系のロシアピアニズムを身につけられていると思うと話されていました。
モスクワ音楽院に留学されていた頃か、ポーランド留学中に身につけられたのでしょうか。
確かに、昔の演奏と今の演奏は明らかに弾き方が違います。
ショパコンの凱旋コンサートで生演奏を聴きましたが、「マズルカ風ロンド」はコロコロ変わる音色がチャーミングで、とても素敵でした!
一方で、分厚い和音の豊かな響きも素晴らしく、彼に合っている気がしました。
ステージから直線的によく飛んでくる響きに感じました。
牛田 智大
大人気の牛田さん。
幼い頃からロシアピアニズムの先生に指導を受けてきたそうです。
オールショパンのプログラムを聴きにいきましたが、本当に美しい響きの世界をつくられていました。
僕はマズルカが特に衝撃で、完全に外国語というか、現地の方なのかな、という感じ。
たくさん勉強されているのでしょうね。
誠実で、努力家で、音楽を心から愛しているのが演奏からもひしひしと感じられ、とても温かい気持ちにしてくださるピアニストです。
ダン・タイ・ソン/Dang Thai Son
特に大好きなピアニスト。
ベトナム人ですが、モスクワ音楽院でテクニックを1からロシアピアニズムに変え、今は往年のフランスピアニズムも混ぜて演奏をされているそう。
コンサートは、まん丸で柔らかな音に包まれる、至福の時間。
優しく語りかけてくれているかのような演奏で、「幸せな気持ちにしてくれる」ピアニストです。
ファンの方には通じると思うのですが、弾き始める前にいつもされている動き、かっこよすぎません⁈
録音だと、僕はメンデルスゾーン&シューベルト&リストのものと、ショパンのマズルカ全集が好きです。
サブスクでも比較的いろいろ聴けますが、CDでしか聴けないものもけっこうあります。
エリソ・ヴィルサラーゼ/Eliso Virsaladze
2022年に演奏を聴きました。
(上に載せた音源はもっと古いものです)
80歳をこえられていますが、まさに円熟極まった音楽だなあ...と感じました。
孤独とは逆方向の達観といえばいいのでしょうか、音楽への愛、人への愛、人生への愛のようなものを感じて、聴いていて心が温かくなります。
しかし、それだけではないのです。
モーツァルト、ショパンのノクターン、と来てからショパンのバラード2番になったのですが、激しくなる部分のコントラストたるや。
異様に速く、たたみかけるようで、本当に恐ろしかったです。
凄まじい集中力と意思力、そして技巧...本当に80歳なのか?
近年の演奏はYouTubeでも聴けますので、ぜひ。
アレクサンドル・カントロフ/Alexandre Kantorow
きっと言葉を失います。
叩きのめされる感じ。
ハイパーヴィルトゥオーソなのに全く曲芸感はなく、芸術的です。
見せつけ感ゼロで、彼自身が音楽と一体になっている感じでした。
ロシアピアニズムで教育を受けたわけではないかもしれませんが(ロシアの先生にも師事されていたようです)、本当に美しく多彩な音色をお持ちです。
とんでもなく巨大な音でも倍音たっぷりで、ホールが響きで満たされて、空間が広がっていくかのよう。
バスがヤバイ。弱音もヤバイ。
よく形容される「黄金の響き」って何やねん、と思ってましたが、カントロフさんを聴いて「これ黄金だわ」ってなりました(笑)
今でも、ときどき日の出を見るたびに、あの響きがフラッシュバックします。
幸運にも2021年、2022年と、リスト「ダンテを読んで」を聴けたのですが、本当に地獄巡りでした。
地響き、悪魔のささやき、燃えさかる炎、栄光の輝き、、音による描写によってリアルな恐怖や魂の浄化を感じます。
コンサートの後、『神曲』読みましたが、まさにあの鮮烈な世界。
ドーパミン出まくるタイプの演奏だけじゃなく、極めて内省的な曲も美しすぎて、本当に素晴らしかったです。
CDも何枚か出されていてどれも素晴らしいですが、オールブラームスのアルバムがイチオシです。
サブスクでも聴けるので、ぜひ!
ダンテソナタ録音してほしい...
ディーナ・ヨッフェ/Dina Yoffe
ヨッフェさんも幸せな気持ちにさせてくれるピアニストです!
コンサートではベートーヴェンの月光を聴きましたが、1楽章は極限の美の世界で、ステージが光を発しているような感じでした。
不思議と暗さがなく、どこか悲しみを湛えた美しい女性が浮かんでくるような演奏。
3楽章は、こんなに表情豊かな音楽にもなるんだ、とびっくり。
この楽章ですら歌になっていました。凄すぎ。
ここぞという時には半分立ち上がりながらのフォルテも出すのですが、それすら耳あたりの良い綺麗な音。
明るい曲では本当に楽しそうに弾かれていて、目線を上げながら笑顔でぱっと上を向く瞬間が強く印象に残っています。
サブスクでいくつか音源を聴けます。
ショパンのピアノ協奏曲の独奏バージョンを演奏されているCDがあるのですが、何となく聴き始めたら、気づけばボロ泣き…
ショパンの時代のピアノを使われており、温かみがある音色も素敵でした。
クン=ウー・パイク/白 建宇/Kun Woo Paik
韓国出身のピアニスト。
ジュリアード音楽院でロジーナ・レヴィーン(故中村紘子さんの師)からロシアピアニズムを学ばれたそう。
会場で聴いたのは、とても個性的な彼独自の音でした。
その日のプログラムは、ラヴェル「クープランの墓」全曲と、グラナドス「ゴイェスカス」全曲(ものすごいプログラムですね!)。
浅いところを狙った音も出されていましたが、深めの打鍵でとても密度の濃い響きを多用されていました。
身体が大きく、重厚な曲でものびのびした豊かな響き。
技巧的にも、76歳で、「トッカータ」や「わら人形」を何の苦もなく素晴らしく弾けるってとんでもない...
上の動画で演奏されている「嘆き、またはマハと夜鳴きうぐいす」も素晴らしかったです。
CDにサインもらって、ウキウキで帰りましたよ。
レパートリーが広く録音も多いです。
僕はシューベルト、ブラームス、バッハ=ブゾーニのアルバムが好き。
まだ全部聴けていませんが、ベートーヴェンのソナタも全曲録音されており、とても素敵です。
サブスクでけっこうたくさん聴けます。
ブルース・リウ/Bruce Liu
ショパンコンクールで一躍有名になったリウさん。
基礎をロシアピアニズムで築かれてきたのかは分かりませんが、ダン・タイ・ソンさんのもとで響きの追求をされてきたのでしょう。
ショパコン直後に聴きにいきましたが、どんな難しい部分でも美しい響きを保っていて、ステージからよく飛んでくる音。
技巧が突き抜けすぎていて、心の中で「やばっ」と呟きながら、にやけてしまいます。
ショッキングな方向ではなくて、明るい気持ちにさせてくれる超絶技巧だなー、と。
とても元気になれる演奏でした。とにかく明るくて楽しい!
ホスピタリティあふれる誠実な感じの方です。
これからが楽しみですね。
アレクサンダー・コブリン/Alexander Kobrin
会場でボロボロ泣きました。
コブリンさんは、しっかりした構成の枠の範囲で自由な演奏をされるので、とても説得力がありました。知的な感じ。
響きはもちろん素晴らしいのですが、もはやそれに気づかなくなるほど音楽に没頭してしまいます。
ウクライナとウクライナの人々に捧げます、と公言されていた2022年のコンサートへ行きました。
「展覧会の絵」では、出だしの「プロムナード」が、長調のはずなのに明るくない憂いのある響き(どうやったら出せるんだ?)。
可愛さの欠片もないグロテスクな「雛の踊り」、息が詰まるほどの「カタコンベ」など、全ての曲で心をえぐられまくり、トドメが「バーバヤーガ」です。
最初の2音、「え?」と不意を突かれるほどのピアニッシモ。
その後どんどん大きくなっていくバスが地響きのようなうねりを生み出し、進軍のようでリアルな恐怖を感じます。
中間部も果てしなく不気味。
そして異様に速いコーダでこれでもかと緊張と恐怖が高められ、終曲「キエフの大門」へ。
ここで初めて、おおらかに光り輝く、神々しいまでの響きに包まれます。
分厚い和音が共鳴して信じられないほど美しい。ボロ泣きです。
なんというか、演奏家の存在を感じさせない、そこにあるのは音楽だけというような演奏をされる方です。
CDで販売中のものはあまり見つかりませんが、サブスクではけっこう聴けます。
録音はコントラスト強めな演奏が多い印象。
パーヴェル・ネルセシアン/Pavel Nersessian
素敵な人間性が伝わってくる、慈愛にあふれた演奏をされる方です。
にこにこしながらステージに現れ、弾きながらも楽しそう。
演奏は、自然な呼吸が心地よくて、おおらか。
そして曲が終わってからも、嬉しそうに、にこっ。
コンサートの2時間で一気にファンになってしまいましたよ(笑)
プーランクの「ナゼルの夜会」を演奏されていましたが、ロシアピアニズムの多彩なタッチは、どんどん曲想が変わるこの曲にぴったり。
あえてコツンという硬い音を連続させたり、掠れた芯のない弱音を使ったりと、遊び心満載。
いわゆる「好ましくない音」も、ああいう風に使うと表現になるんだ!と目からウロコでした。
終曲のpppの響きは、宇宙的で、別の世界にワープしてしまったかのよう。
あー素晴らしかった。
実は、この日の演奏はライブ録音されていて、サブスクで聴くことができますので是非!(2023年3月現在。Apple MusicとAmazonミュージックで確認)
聴いたことがあっておすすめのピアニスト紹介はここまでです。
まだ続きますので、ここでいったん一休みしてくださいね!
音源しか聴いていないけれど、おすすめのピアニスト
ここから紹介するピアニストは、生演奏を聴いたわけではありません。
しかし、素晴らしい響きをお持ちであろうことは感じとれます。
順番は適当です。
アンドレイ・ガブリーロフ/Andrei Gavrilov
巨大な体躯からは想像もできない美音を出されます。
弱音は、基音がとてつもなく細く、ものすごい響き。
一方で、この演奏ではされていませんが、衝撃的な爆音も出されます(笑)
家から徒歩10分の会場で演奏されていたのに、行けなかったのが悔しすぎます。
マルタ・アルゲリッチ/Martha Argerich
超絶テクニックは、実はロシアピアニズムの身体の使い方によるもの。
煌めくような音、鮮烈な表現が魅力的です。
娘さんが監督したドキュメンタリー映画「アルゲリッチ 私こそ、音楽!」も、素顔に迫っていておもしろかった!
エフゲニー・キーシン/Evgeny Kissin
神童と言われた少年時代からたゆまず精進してきた、圧倒的に努力する天才。
人気も抜群。
インタビューを読んでも、音楽への真摯さが本当にすごいです。
どの録音を聴いても、めちゃくちゃピアノが鳴っているのが分かります。
グレゴリー・ソコロフ/Grigory Sokolov
現代のロシアピアニズムを代表するようなピアニスト。
多くのピアニストが、「尊敬しているのはソコロフ」と言っています。
録音でも深遠な音楽を堪能できますが、生で聴いてみたい...
ヨーロッパではかなり演奏活動をされているようですが、日本にも来てほしいですね。
エリーザベト・レオンスカヤ/Elisabeth Leonskaja
おおらかさと自然な呼吸が心地よいです(ものすごい気迫のこもった演奏もされます!)。
ドイツ・オーストリア作品中心のレパートリー。
寝る前にちょっとだけと思って、シューベルトのながーいソナタを聴き始めたら、最後まで止められなくなってしまった経験があります。
旋律が頭の中で無限リピートして眠れず、翌日の仕事に支障をきたしました(笑)
近年もどんどん録音をリリースされているので、じっくり聴いていきたいです。
ラン・ラン/Lang Lang
ブログに掲載できるものがなかったのですが、彼の動画は見ていて楽しいです(笑)
パフォーマンス感もありますが、テクニックはロシアピアニズム。
彼にかかれば、どれだけ巨大な音でも、割れずに鳴りまくります。
どんな表現も自由自在ですね。
リーリャ・ジルベルシュテイン/Lilya Zilberstein
インタビューで、
「ラフマニノフの和声の言語は、どの音が倍音を共鳴させるために大きな役割を果たしているか、和音の中でどの音を際立たせると響きが豊かになるかを考えると読み解くことができ、うまく弾くことができます。」と仰っているのが印象的でした。
本当にその通りで、ラフマニノフのプレリュードの録音は響きが豊かで素敵です。
上の動画は、ラフマニノフ「楽興の時」。
技巧的に難曲の2、4、6曲も、さすがロシアピアニズムといった身体の使い方。
指は下げるだけ、身体の重さを使って楽々弾いているように見えます。
肘裏からエネルギーを伝える動き、力の逃し方、手首の呼吸も、いかにもロシアって感じですね。
イグムノフ流派とネイガウス流派、両方の先生から指導を受けてきたそうです。
イーヴォ・ポゴレリッチ/Ivo Pogorelich
深い打鍵で密度の濃い響きを生み出します。
リスト系のロシアピアニズムの伝統を受け継いだピアニスト。
徹底した譜読みと作品研究をされており、そこから生まれる解釈は彼独自のもの。
個性的ですが、あくまで作曲家が伝えたいことを追求されているそうです。
実はコンチェルトを聴きに行ったことがありますが、めっちゃ大きな会場なのに遠い席を取ってしまいました。
さすがのポゴレリッチさんでも響きが届かず、、あれは間違いなく場所の問題。
今度はちゃんと良い席にします。
ユリアンナ・アブデーエワ/Yulianna Avdeeva
実はコンサートに行ったことがありますが、当時は響きまで意識が及ばず。
「なんでこんなに大きな音が出るんだろう、目の前で鳴ってるみたい」と不思議だったのを覚えていますが、あれは響きに包まれていたんですね。
「展覧会の絵」で、隣の女性が号泣していたのをよく覚えています。
僕もすごく感動しました!
キリッとスタイリッシュな印象の方ですが、上の動画はリラックス感があって、これもまた素敵です。
最後までご覧いただきありがとうございました!
気になるピアニストは見つかりましたか?
少しでもお役に立てましたら幸いです。
本記事では現代のピアニストを紹介しましたが、別の記事で昔日の大ピアニストを紹介しています。
また、サブスクという言葉を使いましたが、クラシック音楽が好きな方にはとてもコスパの良いサービスです。
気になる演奏家や作曲家の録音を好きなだけ聴けるので、音楽ライフが充実しますよ。
最後までご覧いただきありがとうございました。
それでは、今日も良いピアノライフを!