ピアノを美しく鳴らせるようになりたい。
どうすれば、きれいなフォルテが出せるのかな?
こんな疑問に答えます。
こんにちは!ゆきおです。
皆さんは、自分が出しているフォルテの音質に自信がありますか?
僕は以前、自分の汚いフォルテに本気で絶望していました。
「喜びの島」の最後なんて、まさに地獄絵図でした(笑)
ロシアピアニズムの指導を受けるようになってから、きれいなフォルテの出し方を知って、ようやく「そういうことだったのか!」と納得できたのです。
今回は「どうすればきれいなフォルテが出せるのか」について、学んだことをお伝えしていきますね。
美しいフォルテが生まれる秘密とは?
同じ音量でも、「美しく、のびのびしたフォルテ」と「ガツガツしていて耳あたりが良くないフォルテ」は印象がまったく異なりますよね。
この違いが生まれる秘密は、「倍音」にあります。
秘密は倍音にあった
倍音とは、音を鳴らしたときに共鳴して鳴る音のことです。
倍音量が多いと、「いい音」に聴こえます。
倍音について詳しく知りたい方は、下記の記事で解説していますのでご覧ください。
ちょっとピアノから離れて、想像してみましょう!
人の歌声で、「地声で大きな歌声」と「上手な人の歌声」のふたつを想像してみます。
まず、「地声で大きな歌声」。
音圧はあるものの、あまり耳に心地よくない感じですよね。
僕にとっては、学生時代の合唱祭をイメージすると分かりやすいです。
やけに地声の男声の音量の大きく、女声とバランスが取れてない...
そして何だかハモってる感じがしない…
あとはカラオケで叫ぶように歌う人もそんな感じ(笑)
次に、「歌が上手な人の歌声」。
のびのびと響いて、何だか心地いいですよね。
これも合唱祭を例に出すと、合唱部の歌声でしょう。
音量が上がっても、耳に心地よくて、ハモってる感がすごい。
これは、発声の訓練を積むことで、声帯と身体を共鳴させて倍音を多く出しているからです。
倍音量が豊かな音は、ぶつかり合わず、きれいに混ざり合います。
人の歌声を例にあげてみましたが、これはピアノでも同じなのです。
ピアノだと、基音が太い音が「地声」にあたり、倍音がたくさん出ている音が「きれいな歌声」にあたります。
これらは、タッチの違いによって変わってくるのです。
ピアノは、タッチによって倍音量が変わる
押せば鳴る、と思われがちなピアノ。
他の楽器や声楽のように「音を出す」ための訓練はあまりされず、指を動かすことにフォーカスされがちです。
しかし、タッチによって出てくる音質が変わるのは事実。
この記事のテーマは、「美しいフォルテ」でしたね。
それを実現するためには、倍音が多く出るようにすればOK!
- 倍音量が多いフォルテのメリット
・耳あたりがよい音になる
・音同士が共鳴しやすいので、ハーモニーがより美しくなる
・遠くまでよく伸びる音になる
これだけメリットがあるのだから、ぜひとも身につけたいところ。
次の章では、倍音豊かなフォルテが生まれるメカニズムを解説していきます。
倍音豊かなフォルテが生まれるメカニズム
倍音豊かなフォルテを出すための最重要課題は、「力を逃すこと」です。
理由を解説していきます。
倍音を豊かにするには、ピアノの弦の振動を大きくする必要がある
ピアノを鳴らしたとき、弦の振動が大きいほど、豊かな倍音が生まれます。
注意点としては、「鍵盤の底までしっかり弾く」と「豊かな倍音が出ない」ことです。
理由は下記の2点。
- ハンマーと弦の接触時間が長くなってしまい、弦の振動が妨げられる
- 底まで弾く衝撃(下部雑音)が音の波に影響を与え、倍音の発生を妨げる
マリンバ(木琴)に置き換えてイメージするといいかもしれません。
押さえつけるように弾くと、響きませんよね。
無駄のない力でポーンと叩くと、よく響くいい音が出ます。
それと同じです。
これらを踏まえると、倍音豊かなフォルテを出すのに必要な条件は下記のようになります。
- 倍音豊かなフォルテを出すのに必要な条件
打鍵スピードを上げつつ、鍵盤の底に着くまでに力を逃す。
そのためにどんな技術が必要か、解説します。
力を逃すために必要な技術とは
「打鍵スピードを上げる」ことは何となく想像できると思いますので、「力を逃す」ことをメインに解説します。
力を逃す方法の例として、下記のものがあります。
- 手首を柔らかく保ち、衝撃をやわらげる
- 指先ではなく、指の腹の柔らかいところを鍵盤との接点にする
- 胸筋、背筋、前腕の下側の筋肉を使って、鍵盤の底に衝撃を与えないようブレーキをかける
- 前方への運動や旋回運動によって力を逃す
それぞれ見ていきましょう。
手首を柔らかく保ち、衝撃をやわらげる
手首を柔らかく保つことについては、ジュリアード音楽院にロシアピアニズムをもたらしたジョセフ・レヴィーンの言葉を引用します。
「(アントン)ルビンシュタインのそのような強いフォルテが、どうして汚い音にならなかったのかというと、彼は最も強いパッセージを弾くときでも手首はやわらかく保ち、固さから手首を完全に解放していたからだ。
出典:ジョセフ・レヴィーン『ピアノ奏法の基礎』より
彼は、我々誰もがもっている手首を自然のショック・アブソーバー(衝撃吸収装置)に利用したのだ。
(中略)ルビンシュタインは決して鍵盤をたたくように弾かなかった。
彼は肩と腕の重みをしっかり鍵盤に打ち込んでいた。」
ジョセフ・レヴィーン
レヴィーンがいっているだけでなく、ロシアピアニズムの重量奏法においては、常に手首を柔らかく保つことが強調されています。
手首のクッションがないまま鍵盤の底まで圧力をかけると、耳に優しくない、割れたような音が出てしまいます。
しかもそのような音は、弾いている人には大きく聴こえますが、ホールでは遠くまで届かないのです。
指先ではなく、指の腹の柔らかいところを鍵盤との接点にする
鍵盤との接点になる指先についても、同様にジョセフ・レヴィーンの言葉を引用します。
「固い金属的な音でなく、よく響き、人の心に語りかける音を出すには、まず原則として、指の最も弾力性のある部分で鍵盤を弾かなければならない。
出典:ジョセフ・レヴィーン『ピアノ奏法の基礎』より
(中略)指の頭から少し第一関節に入った部分が、指で一番肉が厚く、弾力性に富み、抵抗が少なく、バネのようであることに気がつくだろう。
良い音を出すには、この部分を使って弾くことだ。
この方法は、ある古いヨーロッパ式の、指の先端でたたくように弾くタッチとは全く違う。
現代の基本的なタッチは、指は立てないで、指全体を一つに考え、自然の形のまま、指と手のひらを繋いでいる関節から鍵盤を弾く。」
ジョセフ・レヴィーン
これも手首と同様、クッションを作って衝撃を減らすということですね。
ただし、レヴィーンは「煌びやかな音色や、金管楽器のような音色が必要なときは、指を立てて弾く必要がある」ともいっています。
たとえ指を立てて弾く場合でも、手首は柔らかく保つことが重要です。
胸筋、背筋、前腕の下側の筋肉を使って、鍵盤の底に衝撃を与えないようブレーキをかける
打鍵スピードを上げるときに急激な動きをともなう場合、手首以外の部分でも力を逃していく必要があります。
打鍵方向への力が働いているのと同時に、上に引き上げる力も存在するイメージです。
大げさな例としては、鍵盤より高い位置から「落下させる」ことや「手首のスナップで振り下ろす」ことで打鍵スピードを上げる場合。
そのような弾き方をするとき、ブレーキが必ず必要になります。
ホロヴィッツやアルゲリッチはそれをやってのけますが、あのスピードで打鍵しつつ力を逃すのは困難なため、マネしないのが無難でしょうね(笑)
前方への運動や旋回運動によって力を逃す
これは、真下に向かって打鍵しないことで、鍵盤の底に伝わる衝撃を逃すということです。
- 前方への運動は、飛行機が着陸するような動きで鍵盤に入るイメージ
- 旋回運動は、手首を使いながら斜め方向に鍵盤に入っていくイメージ
垂直に下ろした時と上記の動きを比べると、指にかかる負担が明らかに違うことがわかります。
これが、出てくる音の違いに直結するのです。
美しいフォルテを出すために必要なのは、「力を逃すこと」
今回は、きれいなフォルテを出すことについて解説してきましたが、演奏のヒントは見つかりましたか?
最重要課題は、「力を逃すこと」です。
以前の記事で、ピアニストの力強い演奏を集めたものがあります。
こちらで紹介する動画をご覧いただくと、力を逃すことのイメージがつきやすいと思います!
僕も今回お伝えしたことを身につけようとしていますが、友達に「フォルテが前より美しくなってる!」といわれたので、多少は改善してそうです。
少なくとも、弾いていて不快感は無くなりました(笑)
引き続き、美しいフォルテが出せるよう練習を重ねていこうと思います。
下記のページでは、当ブログのロシアピアニズムに関する記事をまとめています。
よろしければ、どうぞ。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
それでは、今日も良いピアノライフを!