映画『ピアノ・レッスン』を観ました。
複雑な感情の機微を描いた、アーティスティックな映画です。
カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞しているほか、数々の賞を受賞している作品。
映画紹介とレビューを書いていきます。
『ピアノ・レッスン』が配信されているVODも紹介しますね。
この映画は、こんな方におすすめ
・地球の裏側にピアノをもって嫁ぐというぶっ飛んだ設定と、複雑に揺れ動く感情を味わいたい方
・官能的な描写が大丈夫な方
『海の上のピアニスト』映画情報とあらすじ
- 基本情報
原題 | The Piano |
監督 | ジェーン・カンピオン |
主な出演 | エイダ:ホリー・ハンター ベインズ:ハーヴェイ・カイテル スチュワート:サム・ニール フローラ:アンナ・パキン |
上映時間 | 120分 |
- あらすじ
19世紀半ば。
エイダは娘のフローラとピアノとともに見知らぬ男のもとへと嫁いでゆく。口のきけないエイダにとってピアノは言葉の代わりであり、全てだった。
しかし夫のスチュワートはピアノを海辺に置き去りにし、粗野な男ベインズの土地と交換してしまう。
エイダに興味を抱いたベインズはレッスンと引換えにピアノを返すと約束をする。警戒しながらもピアノを弾きに通うエイダだったが、ベインズとの“レッスン"は次第にエスカレートし、ふたりはいつしか愛と官能の炎を燃え上がらせていく――。
Amazonより引用
『ピアノ・レッスン』のレビュー・感想
レビューを書こうとしたのですが、この映画、なかなか言葉にするのが難しいですね!
かなりノンバーバル(非言語)に感情の機微を描いているので、言語化しようとすると一気に薄っぺらくなってしまいます(笑)
ネタバレありで書くので、気にされる方はそっとページを閉じるか飛ばしてくださいね。
エイダはなぜベインズに心を開いていったのか
夫のスチュワートと、ピアノのレッスンを受けるベインズには、価値観の違いが見られます。
冒頭の海岸シーンで早々に、この2人の違いが表現されていますね。
スチュワートの価値観は、だいたい自分中心。
まあ19世紀ですから、現代から見ると古くさい感じ(笑)
エイダを支配できないと察して、思いやるような態度を見せるようになっても、結局は自分の利益になるように行動しています。
一方のベインズ。彼も自分中心の行動はするのですが、相手の感情を感じとることができる人です。
そして、自分の利益を顧みず、相手のことを想った行動もできる。
ピアノという、ある意味で「人質」をとっていたとはいえ、固く閉ざされたエイダの心を開いてあげられたのはベインズだったからでしょう。
西洋人でありながらマオリ族に同化していたことからも、彼の心が柔軟で、異質なものを受け入れる能力が高いことがわかります。
終盤の「ベインズならエイダを助けられる」というセリフにも、そのことが表されているように思うのです。
エイダの再生の物語
エイダは、身の破滅を招くほど強靭な意志をもっていることを自覚しています。
そして、そんな自分を受け入れてくれる人を求めていました。
そういう人に出会えることを望んでいなければ、スコットランドからニュージーランドまで、会ったこともない男と結婚するために行かないですよね(笑)
そんなとんでもない縁談を持ってくるお父さんも、たいがいですけど...
19世紀半ばの話ですし、地球の裏側にピアノを持って引っ越すなんて、相当なお金持ちのはず。
現に、調律師さんが「こんな上物のピアノにはめったにお目にかかれない」と言ってます。
スコットランドで暮らし続けるお金もあったでしょうに、最果ての地に望みをかけたのでしょう。
劇中で、エイダが自分の意志で喋らなくなったのとほぼ同時期に、ピアノを弾き始めていたことが明かされています。
あのピアノは、彼女と一心同体であると同時に、彼女を縛り続けていたように感じます。
ピアノと育ってきたから、潜在意識が「このピアノがないと生きていけない」と彼女に語りかけ、衝動的な行動を引き起こしていったのでしょう。
そして「ピアノの死=それまでのエイダの死」という結果になりました。
エイダが生まれ変わる描写は鮮烈です。彼女の中の価値観が大きく変わった瞬間。
外から見ている側としては、エイダの行動は非難されてもしょうがないものです。
しかし、エイダに幸せになってほしいと思ってしまうほどの痛みを、彼女は受けている。
最後のシーンのおかげで、希望に満ちた気持ちで終えることができます。
脚本の妙ですね。
好き嫌いが分かれそうな作品ですが、僕は好きです。
トンデモ設定と、それによって浮き彫りにされる感情変化の描写がすばらしいと思います。
けっこう生々しい描写があるので、ご家族やカップルでご覧になる場合は気をつけてくださいね!
『ピアノ・レッスン』の音楽と映像
この映画の音楽と映像についても、少し書いておきます。
音楽について
ピアノが物語のカギを握るだけあり、音楽もエモーショナルで素敵です。
途中、少しだけショパンの作品が弾かれますが(しかも酷いところで笑)、この映画の舞台は1852年。
ショパンが亡くなったのは1849年なので、まさに同時代ですね!
エイダは、冒頭ではスコットランドに住んでいました。
ショパンは1948年、スコットランドの古都エディンバラに演奏旅行に行っています。
エイダは、ショパンの生演奏聴けたのかな?と勝手に妄想してしまいました。
サウンドトラックも聴けます。
映像について
ニュージーランドの密林っていう設定が激烈です。
マオリの方々のインパクトたるや。
湿度を感じるような、濃密な空気感の映像に引き込まれます。
そんな環境に馴染もうとしないで、ジャングルの中でも貴族のようなドレスを貫くエイダに、何度もツッコミを入れたくなりました(笑)
娘のフローラもドレスでしたが、途中から天使になっちゃってるし。恋のキューピットでは全くありませんでしたけどね(笑)
『ピアノ・レッスン』を無料視聴できるVOD
2023年5月現在、この映画を追加料金なしで視聴できるVODは下記のとおりです。
配信されている作品は時期によって変動するので、公式ページで確かめてみてくださいね。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
それでは今日もよい1日を!